異文化コミュニケーションとは?

異文化コミュニケーションとは、文化の違いを理解し、適応したコミュニケーションです。

異なる文化や環境の中で育った者同士、円滑に信頼関係を構築するために必要なミュニケーションで、これが欠けると思わぬ形で相手に誤解を生むことがあります。

たとえば、アメリカで「自分の意見をはっきり伝えること」が重要とされる一方、日本では「空気を読むこと」が重視される傾向にあるとします。

仮に両者が異文化を理解しないまま交流した場合、アメリカ人は日本人に対し「自分の意見がないのはおかしい」と感じたり、日本人はアメリカ人に対し「自己主張が強くてやりにくい」と感じたりすることにつながるでしょう。

国際的な交流が盛んになった現代では、以前に比べて上記のような事例は減っているものの、異文化コミュニケーションの大切さは依然変わりません。

そして国籍に限らず、同じ言語や文化的背景をもった日本人同士でも、思想や価値観、立場が違えば「異文化」は存在するものなのです。

異文化コミュニケーションはなぜ重要なの?

VUCAへの対応

VUCA(ブーカ)とは、社会やビジネス環境、組織・個人などあらゆる物事を取り巻く環境が変化し、その不確実性から将来の予測が困難になっている状況を意味します。

「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字からなる造語です。

VUCAを生き抜くためには生産性を上げ、社会のニーズ変化に柔軟な対応ができるよう組織運営の定期的な見直しが必要とされます。

VUCA時代の健全な組織運営には、メンバー同士の円滑なコミュニケーションが欠かせません。

また、異文化理解の視点を持っておくと、さまざまな観点や可能性を考えられるようになるため、市場調査を実施する上でも顧客ニーズの分析の精度向上にもつながるでしょう。

 

グローバル化にともなうビジネス環境の多様化

グローバル化により、日本で働く外国籍の人材が増加したことや、海外展開する企業が増加したことも、異文化コミュニケーションが重視される理由のひとつです。

外国籍の人と関わる職場では、外国籍の同僚と共に業務に携わったり、業務を教えたりなどすることになるでしょう。

近年は、取引先や顧客が外国籍という場合も珍しくありません。

ただ、文化的背景が異なることで、コミュニケーションのズレからミスが発生したり、揉め事になってしまったりする可能性もあります。

業務の正確な遂行や働きやすい職場の維持、そしてグローバルのニーズに応えるために、異文化コミュニケーションが重要です。

 

異文化コミュニケーションは何がもとに形成される?

言語

言語によるコミュニケーションは異文化コミュニケーションのベースとなります。

国籍や文化的背景が違う場合、異なる母国語を話す場合が多く、共通言語で会話します。

非言語

非言語の領域は、表情や身振り手振り(ジェスチャー)、服装、声のトーン、など、言語以外の情報です。

「メラビアンの法則」では非言語情報93%をもとにに印象を決めるため、言語以上に重要な要素があるといえます。

日本人同士では当たり前のように使われている仕草やポーズでも、文化的背景によっては失礼に値する場合があるため、注意が必要です。

宗教

文化や生活習慣は宗教に深く関わっているものが多く、自ずとコミュニケーション方法にも関わってきます。

信仰心の度合いによっても変化するため、同じ宗教を信仰している人でも異なる考え方をもつ人もいます。

 

異文化コミュニケーションを成功させるポイント

相手自身の理解に努める

相手の国籍や宗教についてある程度の知識があると、コミュニケーションは取りやすくなります。

しかし、それらの表面的な情報だけにとらわれず、相手がどのように感じているのか・考えているのかという観点をもつことが大切です。

相手との距離感に気を配る

異文化コミュニケーションにおいて意識したいポイントのひとつに、相手との距離感があります。

たとえば、国の政治や宗教のことなどデリケートな話題は、安易に質問するとタブーに触れることも。

距離感に関しては、国籍を問わずマナーとして気を付けるべきことですが、日本人同士の初対面で当たり前に聞くことでも国によっては不適切な場合があります。

相手の反応を確認しながら、徐々に親しめるような関係を築けるとその後もスムーズにコミュニケーションがとりやすくなるでしょう。

共通の話題を見つける

お互いが心地よくコミュニケーションをとるためには、共通の話題を見つけることもポイントです。

些細な内容でも心理的な距離が縮まり、信頼関係を築きやすくなります。

たとえば、同僚であれば仕事に関する考え方や知人の間で何が流行っているかなどは、共通点を見つけやすいテーマです。

異文化コミュニケーションを促進する効果的な方法

アクティブリスニング

ただ相手の話を聞くのではなく、相手の意図を正しく理解するため、質問や投げかけで掘り下げていく傾聴方法がアクティブリスニングです。

異文化コミュニケーションの場合、文化的・歴史的な背景の違いから相手のメッセージを思わぬ方向に解釈していたということもあり得ます。

アクティブリスニングを活用し、コミュニケーションの齟齬を未然に防いでいくことが大切です。

主要な宗教の知識

宗教は文化に深く結びついていることが多く、宗教を理解しておくことで行動原理を理解する

しかし、中途半端な知識のみだと、逆に失礼な言動につながる場合があるため注意しなければなりません。

たとえばキリスト教ひとつとっても、プロテスタントやカトリックなどの宗派があります。

宗教を一緒くたにした発言は相手を不快にさせたり、逆に自身が恥をかいたりすることにつながるでしょう。

日常的に宗教を意識する機会が少ない日本人だからこそ、宗教について正しい知識を持ち、広い視点で相手を見ることも異文化の理解につながります。

ステレオタイプや偏見について学ぶ

私たちには生活習慣、環境、価値観などが当たり前のように根付いており、無意識的な思考や行動がステレオタイプに結びついています。

そのため、ステレオタイプを完全に排除することは困難でしょう。

しかし、ステレオタイプがあることを正しく理解する、または理解できるよう努めるなどステレオタイプと向き合う姿勢が、自分の思考や行動の柔軟性につながります。

異文化コミュニケーションで信頼関係を築こう

異文化コミュニケーションは、異文化を持つ人との単なる交流ではなく、相手の背景を理解した上で意思疎通をとることが重視されます。

ビジネスシーンや職場環境、顧客ニーズなどのさまざまな場面において「多様化」が求められる現在、異文化について考えることで新たな視点を取り入れられるかもしれません。