ソーシャルビジネスの存在をご存知でしょうか?
私たちが過ごす世界は、様々な社会問題を抱えています。
貧困や環境問題のようにスケールが大きい問題から、日々の生活で感じる小さな問題までを意味します。
日本では介護問題やいじめ問題などメディアに取り上げられることも多く、身近に感じるのではないでしょうか。
ソーシャルビジネスは、そのような社会問題の解決を目指すことを目的としたビジネスです。
本記事では、ソーシャルビジネスの概要や現状、重要性について解説していきます。
ソーシャルビジネスとは?
ソーシャルビジネスとは簡単に言うと、社会問題を解決することを目的とした事業です。
寄付や補助金などの外部資金には頼らず、事業収益を上げながら社会問題の解決に取り組むのが大きな特徴です。
社会問題は社会の矛盾、不合理から生じるもので、人々の生活に大なり小なり影響します。
貧困や昔から深く根付いている問題や、時代の変化に応じて発生する新たな問題など様々です。
中には複雑な事情が絡んだ社会問題も多く、行政による取り組みだけでは手にあまるでしょう。
そのような状況からも、ソーシャルビジネスへの注目が高まっています。
ソーシャルビジネスの定義
ソーシャルビジネス研究会では、ソーシャルビジネスの定義を「社会性・事業性・革新性」の3つの要素に分けて定義しています。
社会性
早急な解決が必要な社会問題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
事業性
社会性を主軸とし、掲げたミッションをビジネスとして継続的に進めること。
革新性
社会的な商品・サービスの開発や仕組化をすること。また、その活動が社会に影響することで新しい社会的価値を創出すること。
ただ、海外におけるソーシャルビジネスの定義は歴史的要因などが絡み、日本とは異なる定義がされていることもあります。
ソーシャルビジネスの父・ユヌス博士の3つの特徴
ソーシャルビジネスの父と言われるムハマド・ユヌス氏は、グラミン銀行の創設者であり経済学者です。
貧困層や低所得者を対象に、無担保で小規模の融資を行う「マイクロファイナンス」を生み出し、バングラデシュの貧困問題に大きく貢献しました。
その結果、2006年にノーベル平和賞を受賞しています。
ユヌス氏が提唱するユヌス・ソーシャル・ビジネスの7原則は、以下のように定められています。
- ユヌス・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、貧困、教育、環境等の社会問題を解決すること。
- 経済的な持続可能性を実現すること。
- 投資家は投資額までは回収し、それを上回る配当は受けないこと。
- 投資の元本回収以降に生じた利益は、社員の福利厚生の充実やさらなるソーシャル・ビジネス、自社に再投資されること。
- ジェンダーと環境へ配慮すること。
- 雇用する社員にとってよい労働環境を保つこと
- 楽しみながら。
ソーシャルビジネスの重要性
時代が変わって様々な技術が発展しても、社会問題は消えるどころかより深刻化することまであります。
中には、顕在化していない社会問題が存在する可能性もあるのです。
人々が社会問題への当事者意識を持って課題解決に取り組まなければ、社会問題が解消されることはないでしょう。
社会問題が放置されたままでは、社会的損失、人々の幸福度の低下、地球環境の悪化など、生活が脅かされる事態にもなりかねません。
そのため、社会問題の解決に向けて取り組むソーシャルビジネスが必要とされるのです。
ソーシャルビジネスの現状
三菱UFJリサーチ&コンサルティングで行われた2015年の調査結果によると、社会的企業の経済規模として、「社会的課題の解決に取り組んでいる」とう事業は経済全体の11.8%と記録されています。
その後にも社会課題への取り組みを目的とした会社が増え続けているため、市場規模は拡大していると言えます。
また、SDGsの提唱によっても、社会問題へ取り組みを意識する一般企業も増加しています。
ソーシャルビジネスの規模が大きいとは言えませんが、人々の社会問題への意識が高まっていることで、。ソーシャルビジネスの認知度も徐々に上がっていくでしょう
ソーシャルビジネスの課題
認知度を上げる
「ソーシャルビジネス」という言葉自体が、世間的な認知度や浸透度がまだ低い傾向にあります。
ただ、近年はSDGsへの取り組みがメディアで取り上げられることも多く、人々の関心も大きくなりつつあります。
SDGsとの関連性も高いソーシャルビジネスは、今後もっと認知度が高まることが期待できるでしょう。
そのため、ソーシャルビジネスに取り組む企業の情報発信やメディアへの掲載で認識を広げることが、これまで以上に重要です。
特に、TVを情報源にしている世代は多いため、幅広い世代の人々に認知してもらうためにはTVで取り上げられることが非常に効果が高いと言えるでしょう。
事業を継続させる
ソーシャルビジネスは、社会問題に取り組むことが目的とはいえ、事業を継続するためには安定した収益を得ることが必要不可欠です。
社会問題は長期的な視点で取り組まなければ解決できない問題が多いため、ビジネス活動が維持できなければ元も子もありません。
「社会問題を解決したい」という情熱はもちろん必要ですが、ビジネスとしての戦略性や冷静な観点も求められます。
経営戦略や成果目標、必要な資金・資源など、事業の整備はもちろん必要です。
国や自治体からの支援などを受けたり、専門性の高いNPO法人と連携したりなども事業を継続する上では重要といえるでしょう。
新しいビジネスのカタチを知ろう
ソーシャルビジネスは社会問題の解決を目的としたビジネスです。
SDGsが社会で認知されるようになり、人々の社会問題への関心も高まりつつあります。
ただ解決すべき社会問題は多く存在するのにも関わらず、ソーシャルビジネスは認知度は高いとは言えません。
また、事業として成り立たせるために、社会問題を解決するという目的を維持しながら事業を継続するための戦略も求められます。
事業として成功すれば、新たな価値を社会にもたらし、変革を生み出すことができるかもしれません。
起業を検討している場合、ビジネスを通して社会に貢献できる「ソーシャルビジネス」があることを知っておけば、アイデアの幅が広がるでしょう。