原 泰久先生の描く古代中華戦国大河ロマン『キングダム』は、マンガ大賞の受賞や4部にわたる実写化などのヒットを誇る作品です。

物語の面白さはもちろん、個性豊かで魅力的な将軍が多いのも本作が人気を集める理由のひとつでしょう。

中でもカリスマ的な魅力で熱い人気を集めるのが、秦の将軍「桓騎」です。

残虐非道なスタイルで初登場時から強烈なインパクトを残した桓騎ですが、登場するたび彼の虜になる読者が続出しました。

桓騎がかっこよすぎると言われる理由

(C)原泰久/集英社・キングダム製作委員会

リーダーシップ

桓騎将軍は、カリスマ的なリーダーシップを持っているキャラとしてたびたび注目されています。

桓騎軍の兵士は略奪・虐殺・拷問を平気で行い、陣営には娼婦を呼ぶなどやりたい放題。無駄なルールは設けられておらず、秦軍のなかでも異色の雰囲気を放っています。

しかし、桓騎が将軍の地位を手にしているのは、そのような自由さの中で軍を統率し数々の戦果をあげているからでしょう。

軍の特色を見極め、適した方法でリーダーシップを発揮しているといえます。

部下には「お頭」と慕われており、信頼関係もしっかりと築かれている様子。

主人公の信もリーダーとして学ぶことが多いキャラですが、真逆に位置するタイプの桓騎もまた引きつけられるものがあります。

底知れない大人の色気

容姿端麗で艶やかな雰囲気を持つ桓騎は、そこはかとなく漂う色気とビジュアルの良さでもファンを魅了しています。

ニヒルな笑みを浮かべた余裕の表情は、めったに崩れることはありません。自信に満ちた堂々とした表情・佇まいが相まって深い色気につながっているのでしょう。

信は「瞳に吸い込まれそうになった」、飛信隊の尾平は「男の俺がドキッとするくらいかっこよかった」と口にしています。

作中のキャラが外見を褒める将軍は希少です。

規格外の発想力がある

桓騎は頭脳派である上、常識では考えられないような戦法を平然と行います。

ときにそれは倫理から外れた残虐な方法だったり、人間心理の弱点をつくような戦略だったり、さまざまなパターンで敵将を蹂躙していくのです。

そのなかでも驚かれたのが「黒羊丘」の戦いで、敵を攻める最高のチャンスに一切軍を動かさず、敵味方ともども大混乱させたことでした。

桓騎を慕う仲間ですら、説明を求めたという展開をみせています。

しかしそんななかでも理解のある部下は、「お頭は無駄なことを好まない」「すっぽかした方が得すると思ったからだろ」などと予測していました。

結果、敵には完全勝利しています。

残虐性の中に垣間見える人間味

倫理観を欠いた行動が目立ちながら、仲間想いな一面や時折みせる優しさなど、完全な「外道」にならないところが、桓騎というキャラを立たせているのでしょう。

一度敵対した信が、「最悪の極悪人のクソで、何度殺してやろうと思ったか分からねぇ。でも普通の人間が目を背けるような者たちへの思いが確かにあった」と言っていることからもわかります。

印象的な場面のひとつが「函谷関」の戦いの最終局面で、味方だが桓騎を認めておらず、うまが合わなかった将軍「張唐」に対する行動でした。

桓騎に最期の言葉を残した張唐に対し、「調子の狂うじじィだったぜ、全く」と毒づきながらも、力尽きた彼を落馬から守るシーンは、微かな愛情を感じられます。

冷酷なのにどこか温かさが感じられることもあり、その根底にはどのような思想が眠っているのか気になってしまいます。

 

桓騎将軍のかっこよすぎな名セリフ

(C)原泰久/集英社・キングダム製作委員会

「心配すんな。全部うまくいく。」

桓騎の無茶な策などで心配する部下にかける、お決まりのセリフです。このセリフを聞いた部下の表情もなかなかいいもの。

いつも余裕で自信に満ちた佇まいは、彼の信念と成功に導いた実績に裏付けされたものといえるでしょう。

そんな桓騎にこのような言葉を言われたら、思わずついていきたくなりますね。

決して檄を飛ばすわけでなく、部下たちを包み込むように士気を底上げしていく一言に、桓騎らしさを感じます。

「底なんてないんだよ 痛みに」

桓騎軍に取り囲まれた趙の将軍・扈輒(こちょう) が、残虐の限りを尽くす桓騎をなじり「私は昔の戦場で人の闇の底を見た 本当に闇の底 つまりは痛みの底だ」と語り始めます。

桓騎は即座に「だから浅いっつってんだよ」「そこが痛みの底だと思ったお前が浅いんだよ」「底なんてないんだよ 痛みに」と反論。

桓騎がどんな「痛み」と戦ってきたのか気になりますし、その痛みを知った上で非道な行為に及ぶ彼が余計に気になるセリフです。

「てめェは はしゃぎすぎなんだよ」

魏軍の井闌車を、桓騎お得意の奇策で破壊したときのセリフです。

城壁から侵入するための井闌車で秦軍を焦らせたものの、それを上回る桓騎の策で城壁を守りました。

呉鳳明の悔しそうな顔もいい味を出しています。

「国家なんて一枚皮をはぎゃ ごく一部の人間が好き放題やってるだけのクソ溜めだろうが」

秦の将軍・張唐に国を背負う覚悟を問われたときのセリフです。

はじめは「あるわけねェだろうがそんなもん ボケてんのかてめェは ずっと言おうと思ってたんだが うぜェよ」と不良少年のように返す中、突然国家の本質を鋭く指摘するセリフにガツンときます。

こんなこと言ってもかっこいいのは、知力・武力・カリスマ性に長けた桓騎だからでしょう。

まとめ

大人の色気あふれる桓騎は、武将に必要な武力・知力はもちろん、常軌を逸した発想や本質をつく鋭いセリフなど、さまざまな魅力があります。

登場するたびに、その複雑な性格やギャップにも思わず引き込まれてしまうキャラクターです。