「紛争ダイヤモンド」「ブラッドダイヤモンド」を聞いたことはありますか。

アクセサリーのイメージが強いダイヤモンドですが、その流通ルートには紛争が関わっている可能性があります。

そんなダイヤモンド紛争を描いたのが映画『ブラッドダイヤモンド』です。

「ラストサムライ」のエドワード・ズウィック監督の社会派アクション映画です。

映画『ブラッドダイヤモンド』のあらすじ

作品の舞台は、1999年のアフリカ・シエラレオネ共和国。

反政府勢力であるRUFに村を襲われ、大人子供問わず銃を持ち戦う傷ましいシーンから始まります。

シエラレオネでは、武器購入のために市民が採掘場で強制労働させられているのです。

労働者の一人であるソロモンはある日、希少価値の高いピンクダイヤモンドを見つけます。

牢獄でそのことを知ったダイヤ密輸業者のアーチャーはソロモンに接近。

ソロモンの家族を探し出すことを条件に、ピンクダイヤモンドの在処を教える取引を持ち掛けます。

 

ダイヤモンドを取り囲む現実

アメリカは世界で取引されるダイヤの3分の2を購入しています。

その中には、紛争の中で取引されているものも。

ダイヤモンドの採掘場では、横流ししようとする労働者は見逃されず、有無を言わさず殺害します。

RUFが誘拐した子供は、少年兵として街への襲撃に加担させられます。

 

ブラッドダイヤモンドの心に響くセリフ ※以下ネタばれあり

「盗んだのはお前だろ」

村を襲いってソロモンと家族と引き離した上、牢屋でピンクダイヤモンドを出せとソロモンに迫ったRUFのポイズン大尉に、ソロモンが放った言葉。

ソロモンのどうにもならない悲痛の思いが痛いほど伝わってきます。

「いや、ただの人間だ」

RUFから連れ戻した子供たちの面倒を見るベンジャミンに、「多くの人間は善だと思うか?」と問われたときのアーチャーの返答。

傭兵として生きてきたアーチャーは、極限状態の人間を何度も観てきたでしょう。

ベンジャミンは「そのとおり、善悪は行動で決まる」と返しています。

「人の行為を神は赦すのだろうか いや、神はとっくにこの地を見捨てている」

戦争が終わらないシエラレオネを憂いて、アーチャーが嘆いた言葉。

「神に見捨てられた地」になってしまったのは、人間が争いをやめないからなのか、はたまた神に見放されたがために戦争が起こってしまうのか。。

「俺は悪魔に見えるだろう?それは地獄にいるからだ」

ソロモンの息子・ディアを人質にとり、ピンクダイヤモンドを渡すようにソロモンを脅すポイズン大尉が言った一言。

ポイズン大尉もこんな紛争は早く終わらせてしまいたいのだと。

残虐で冷酷非道なポイズン大尉。

こんな世の中が、人間を悪へと導いてしまうのでしょうか。

 

『ブラッドダイヤモンド』の感想

社会派アクションというだけあり、かっこいいアクションシーンがありながらも考えさせられるようなストーリーです。

つい数分前まで平穏な時間が流れていたのに、一瞬にして戦場になる街。

家族と引き離され、RUFに連れ去られた子供たちの末路。

殺戮に巻き込まれる住人。

少年兵として洗脳される子供たち。

痛ましいシーンが多いものの、ストーリー展開には目が離せませんでした。

強引で気性が荒く見えたアーチャーでしたが、子供世代のために平和を願うソロモンや真実を広めたい記者のマディ、子供を保護するベンジャミンと出会って次第に心境の変化が生まれます。

それぞれの目的のために共に行動していたアーチャー・ソロモン・マディですが、衝突しながらもお互いのために助け合って行動するようになる様子が印象的でした。

死を悟ったアーチャーはピンクダイヤモンドをソロモンとマディに託し、ダイヤに隠された真実を暴くために尽くします。

社会に変化をもたらすため、命を燃やすアーチャーの姿には心が震えます。

 

『ブラッドダイヤモンド』を観て改めて思うこと

すべてがダイヤモンドの裏で起こっていることと思うと、「ダイヤモンドは美しい」の一言では片づけられません。

「紛争ダイヤモンドではないことを証明」するためのキンバリー・プロセス制度が導入されたこともあり、現在はクリアなダイヤモンドも多く流通しています。

しかし、ダイヤに限らずすべての商品には、必ず流通ルートというものが存在します。

私たちが当たり前のように目にするものの裏側には、どんなストーリーが隠れているかわかりません。

実は「一番の加害者が消費者である」なんて状況も、ありえるのです。

自分にできることはたかが知れていますが、消費行動が世の中どのような影響をもたらすか思いを馳せられる人でありたい。

世の中の人には少しでいいからそうゆう視点を持ってほしい。

そのように思わされる作品でした。