現行の外国人材受け入れ制度の技能実習制度に代わる「育成就労制度」が新設され、2027年4月より運用が開始されます。技能実習生の受け入れ先企業では、制度の概要は把握したものの「現場や人事担当者として具体的に何を準備すればいいのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、育成就労制度への移行に伴い総務・人事が押さえておくべき実務上のポイントや注意点について解説します。


育成就労制度の概要についてはコチラ↓

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育成就労制度における受け入れ企業が実務で押さえたいこと

まず、育成就労制度には以下のようなポイントがあります。

 

技能レベルやキャリアステップ 育成就労期間が3年、特定技能1号が5年

特定技能2号で在留資格が無制限に。

転籍の制限が緩和 「やむを得ない事情」に加えて

・ 同一機関での就労が1年を超えている

・ 技能検定試験基礎級等及び一定水準以上の日本語能力に係る試験(日本語能力A1相当以上)への合格

・ 転籍先が、適切と認められる一定の要件を満たす同一業務区分

日本語能力の要件 就労開始前:

A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格又は相当講習受講

特定技能1号移行時:

A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)合格

 ※当分の間は相当講習受講も可

特定技能2号移行時:

B1相当以上の試験(日本語能力試験N3等)合格

※各分野でより高い水準の試験の合格を要件として設けることもできる

監理団体・受け入れ企業の要件厳格化 監理団体監理支援機関となる。

許可制とし、許可基準は厳格化

育成就労計画の作成 従来の技能実習計画に代わるもの

 

これらを踏まえた上で、受け入れ企業の担当者が実務で押さえたいポイントを解説します。

 

受け入れ企業の要件を確認しておく

受け入れ企業は「育成就労実施者」として育成就労外国人を雇用し、育成就労計画に基づいて技能を習得させます。厚生労働省では、受け入れ先企業の以下のような要件が設定されています。施行前には、自社が受け入れ先企業として要件を満たしているか、改めて把握しましょう。

 

◇育成就労を行わせる体制が整っている

育成就労外国人の受け入れ企業では、以下の担当者を設定しなければなりません。

  • 育成就労責任者
  • 育成就労指導員
  • 生活相談員

 

それぞれの職員は、共通して過去3年以内に養成講習を修了したことを要件として定められています。しかし施行後当分の間は、養成講習については技能実習制度の養成講習により代替可能の予定です。

 

◇業務の運営の基準を満たしている

運営の基準は、以下のように定められています。

  •  過去1年以内に、育成就労実施者又は監理支援機関の責めに帰すべき事由により、育成就労外国人の行方不明者を発生させていないこと。
  •  過去1年以内に、育成就労外国人に従事させる業務と同種の業務に従事していた労働者を、離職させていないこと(定年その他これに準ずる理由により退職した者、自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者、自発的に離職した者等を除く)。
  •  労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること。
  •  送出機関等から、社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は供応接待を受けることなどを行っていないこと。
  •  育成就労外国人に関し、地方公共団体から、共生社会の実現のために実施する施策に対する協力を要請されたときは、当該要請に応じ、必要な協力をすることとしていること。
  •  育成就労外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講じていること。
  •  育成就労外国人に対する指導体制その他の育成就労を継続して行わせる体制が適切に整備されていること。
  •  育成就労外国人と雇用契約を締結するに当たり、労働条件等の待遇の説明を直接又はオンラインで行っていること。

 

◇就労外国人の受け入れ人数枠

育成就労実施者は常勤職員の数に応じ、受け入れられる外国人の人数の上限が定められています。また、以下のような要件もあります。

  • 受入れ人数枠は1年目~3年目までの育成就労外国人の合計に対する上限となる。
  • やむを得ない事情により転籍した者、3年を超えて育成就労を延⾧している者、その他育成就労外国人の保護の観点から特別の理由を有すると認められる者(妊娠・出産等により育成就労を中断していた者が再開する場合等)は、受入れ人数枠の規制に含めないものとする。

 

(引用元:厚生労働省HPより 育成就労制度の関係省令等について )

在籍中または受け入れ予定の技能実習生の取り扱いを把握する

施行日である2027年(令和9年)4月1日の時点で自社に在籍する技能実習生や受け入れ予定の実習生がいる場合、その取り扱いについて把握が必要です。

 

現在は、以下のように取り扱いが定められています。

 

◇引き続き技能実習を行う場合

  • 施行日時点で既に「技能実習」で在留している場合、認定済みの計画期間中は「技能実習」のまま継続して実習を行い、期間満了を迎えることができる
  • 育成就労制度の施行後も技能実習を行う1号技能実習生と2号技能実習生の数は、育成就労外国人の受入れ人数枠の計算の際は、育成就労外国人の数として計算する。
  •  施行日時点で技能実習を行っている1号技能実習生は、施行後も2号技能実習に移行することが可能。
  •  施行日時点で技能実習を行っている2号技能実習生のうち、2号技能実習を1年以上行っている者は、施行後も3号技能実習に移行することが可能。

 

◇施行日以降に技能実習を始める場合

  • 施行日より前に技能実習計画の認定と在留資格認定証明書の交付を受けた者は、令和9年6月30日までに入国しなければならない
  • 施行日より前に申請した技能実習計画は、施行日以降に認定される場合があります。この場合、申請する技能実習計画については、実習開始日が令和9年6月30日以前であることが必要であり、原則として同日までに入国が必要。

 

◇在留資格の更新・変更

  • 施行日時点で「技能実習」の在留資格で在留している者および、施行日以降に「技能実習」の在留資格で入国する者は、施行日以降も引き続き「技能実習」の在留期間の更新を受けることができる
  • 施行日前に在留期間の更新申請をした者について、施行日後も在留期間の更新の対象となる
  • 施行日時点で「技能実習」の在留資格で在留している者及び施行日以降に「技能実習」の在留資格で入国する者は、施行日以降も技能実習1号から2号への、2号から3号への在留資格の変更を受けることができる
  • 施行日以降に「技能実習」以外の在留資格に変更した場合は、「技能実習」への在留資格変更の対象とならない
  • 施行日前に在留資格の変更申請をした者について、施行日後も在留資格の変更の対象となる

 

なお、施行日以降に技能実習計画の認定申請は行えません。技能実習生の在留期限や実習のステップ、受け入れ予定の実習生の入国日等を改めて整理し、区分けをしておきましょう。

 

(引用元:厚生労働省HPより 育成就労制度の施行に伴う 技能実習の経過措置について )

給与水準・昇給制度の見直しを行う

育成就労制度において、育成就労外国人は就労して1年経過後、本人の意向による転籍が認められ、従来に比べて転職が容易となります。受け入れ企業は、自社への定着が課題となるため、給与水準や昇給制度の見直しが求められるでしょう。日本人社員と同等以上の水準であることは前提として、経験年数や日本語レベル、技能レベルに応じた昇給制度・給与水準を定め、明確に示すことが重要です。

 

また、諸手当・賞与の適用範囲も点検しておきましょう。母国を離れた技能実習生にとっては住居環境(社宅・賃貸)といった生活サポート、相談体制の充実は大切です。労働条件明示書や就業規則は外国語(またはやさしい日本語)に対応できているか改めて確認しておく必要があります。

 

日本語学習・資格取得の社内支援体制を構築する

育成就労制度では、就労時や特定技能1号・2号への移行にそれぞれ日本語レベルの要件が定められています。

 

就労開始前 A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格又は相当講習受講
特定技能1号移行時 A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)合格

 ※当分の間は相当講習受講も可

特定技能2号移行時 B1相当以上の試験(日本語能力試験N3等)合格

※各分野でより高い水準の試験の合格を要件として設けることもできる

 

日本語能力検定などの試験合格が必要となるため、企業側での学習環境のバックアップが求められます。業務時間内での日本語学習時間の確保やオンライン講座・教材の費用補助制度の導入、技能検定試験・日本語試験の受験スケジュール管理・申請手続きといったサポートがあると安心です。

 

監理支援機関や外部監査人の要件を確認する

技能実習制度における監理団体は、育成就労制度で「監理支援機関」となり、要件の厳格化や許可制の導入があります。現在、技能実習制度の監理団体であっても、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことは認められません。現在取引のある監理団体や監査人が監理支援機関の許可基準を満たしているか確認が必要です。

 

◇監理支援機関の許可要件

  • 外部監査人(※)の設置の義務化
  • 債務超過がない
  • 監理支援を行う育成就労実施者の数が原則2者以上(一部分野では代替可能)
  • 監理支援事業に従事する常勤役職員1人当たりの育成就労実施者の数が8者未満・育成就労外国人の数が40人未満(一部分野では代替可能)
  • 監理型育成就労外国人からの母国語相談等に対応できる体制を有していること。
  • 育成就労外国人の保護の観点から、緊急対応等の能力を有していること。監理支援責任者について

 

※外部監査人とは、監理支援機関や受け入れ企業の監査する者です。

  • 養成講習を受講している
  • 弁護士、社会保険労務士、行政書士の有資格者その他育成就労の知見を有する者
  • 監理支援機関と密接な関係を有さない者

 

(引用元:厚生労働省 育成就労制度の概要)

(引用元:厚生労働省 育成就労制度の関係省令等について)

 

育成就労制度の施行に備えて自社の体制を見直しましょう

2027年4月の育成就労制度の施行に向けて、受け入れ企業には体制構築や社内制度の見直しなど、適切な実務対応が求められます。単に制度のルールを順守するだけでなく、転籍制限の緩和を見据えた定着率向上の施策や、日本語学習・キャリアアップの支援体制を整えることで、、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

 

まずは自社の指導体制や人事・給与制度の現状を洗い出し、必要に応じて監理支援機関などの外部専門家とも連携を図りながら、新制度への移行準備を着実に進めていきましょう。外国人材と企業がともに成長できる環境づくりを目指すことが、今後の持続可能な事業展開のカギとなります。