愛知県美術館の開館30周年記念で開催されている、岡本太郎の展覧会へ行ってきました。

大阪万博のために建てられた『太陽の塔』『芸術は爆発だ』という名言、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

筆者にとっても、岡本太郎は随分と前から気になるアーティストでした。

川崎市にある岡本太郎美術館にはなかなか行けないので、今回名古屋で展覧会があって嬉しいばかりです。

この記事では、岡本太郎の展覧会で発見したことや印象に残った作品をご紹介します。

 

岡本太郎の愛知に所縁がある作品

岡本太郎は神奈川県出身で、パリでの活動や大阪万博の印象が強いですが、実は愛知県とも所縁があります。

ここで紹介する作品は、岡本太郎と愛知県の深い関わりがある作品です。

太陽の神話

『太陽の神話』は、岡本太郎が初めて製作したモザイク・タイルのアートです。

自宅の浴槽を改装した時に使用されたモザイク・タイルにアートの可能性を見出したことから始まりました。

このモザイク・タイルは愛知県発祥の伊奈製陶(現LIXIL)の東京事務所の担当者によって紹介された施工です。

この作品をきっかけに岡本太郎はパブリックアートにも携わるようになりました。

歓喜

1965年(昭和40年)に名古屋市久国寺の梵鐘です。

無数の角が生えたようなユニークな形をした鐘が、見る者を惹きつけます。

角に見える突起は手をイメージしているんだとか。

『歓喜』の作品名にも表れていますが、無数の手が上に伸び、喜んでいるように見えます。

 

若い太陽の塔

『若い太陽の塔』は、愛知県犬山市にある日本モンキーパークのシンボルタワーとしてそびえ立っています。

大阪万博で『太陽の塔』が展示される前年にと発表されてから、名古屋鉄道が岡本太郎に依頼して作られました。

老朽化問題などがありましたが、岡本太郎の生誕100年記念の年の2011年10月に合わせて修繕され、一般公開されました。

 

星・花・人

『星・花・人』は、1971年当時に名古屋市中区栄にあったオリエンタル中村百貨店 (現:名古屋三越) の壁面に設置されていたレリーフです。

夜間に照明が灯ったレリーフは美しく、栄の街のシンボルとなっていました。

オリエンタル中村百貨店は『天に星 地に花 人に愛』のキャッチフレーズを広告などで使用していましたが、抽象的でありながら躍動感のあるレリーフはまさにその言葉を表しています。

 

印象に残った岡本太郎の作品たち

岡本太郎は数々の名画を残しています。

ここでは、筆者の感性に基づいた岡本太郎の印象的な作品をご紹介します。

全て紹介できないことが惜しいので、ぜひ足を運んで見てほしいです。

 

傷ましき腕

岡本太郎の代表作の一つである『傷ましき腕』は、25歳の時にパリで描かれました。

暗い部屋の中で不思議な存在感を放つ大きなリボンと、力のこもった腕に巻き付いた紐が印象的な作品です。

描かれているのは、岡本太郎自身であると言われています。

この作品からは人間の負の感情を感じ取ることができますが、同時に苦悩に立ち向かい、乗り越えようとする情熱を感じられます。

1936年に描かれたものなので、戦争に向かっていた不穏な空気の中で生きる、岡本太郎の悩ましき時代に触れたような気持ちになりました。

 

空間

布のしなやかな質感と棒の真っすぐで硬そうな質感の対比が印象的な作品です。

岡本太郎がピカソの作品に感激し、乗り越えようとする中で描かれました。

黒い背景に白い物体、反対の質感と言える2つの物体は、のちに唱える「対極主義」の片鱗でしょうか。

 

午後の日

頬杖をついて笑いかける子供がモチーフの作品です。

エネルギーに満ち溢れた作品が多い中で、穏やかな気持ちにさせてくれました。

しかしよく見ると頬に触れた両手は、本当の姿を隠そうと取り繕うとしているようにも、顔面を引き裂こうとしているようにも見えます。

「本音を話せない」「違う自分になりたい」など、子供が抱える苦悩を表していたのかもしれません。

見方によって意味合いが変わる楽しさがある作品です。

『午後の日』は、都立多磨霊園にある岡本太郎の墓石にもなっています。

 

露店

カラフルな雑貨とは対照的に、薄暗い店内でうつむいた売り子の少女が描かれた作品です。

青春時代の明るさと苦悩を表した作品と言われています。

日本での展示は約40年ぶりだそう。

電撃

稲妻に打たれてのけぞる男性が印象的な作品です。

よく見ると、崖の側面が人の顔になっているのが分かります。

心なしか、電撃はほどかれた赤いリボンのようにも見えます。

『傷ましい腕』と合わせてみると、空に描かれた無数のピンク色の線は、腕に巻かれていた紐のように見えるのです。

“大きなインスピレーションを受けて負の感情を乗り越えた岡本太郎”と勝手に考察しています。(笑)

 

La Femme Enrubannee(リボンを結んだ女)

美しい女性に大きなリボンが飾られた作品です。

優雅で憂いを帯びた表情の女性は、リボンによって束縛されているようにも見えます。

美しさとしなやかさを持ちながらも、社会進出をするには不平等が多かった当時のフランス女性の境遇を表しているのかもしれません。

 

展覧会の情報

混雑してる?

土曜日に訪れましたが、非常に有名なアーティストなだけあって混雑していました。

混雑が予想される時を避けてお昼時の12時に行きましたが、並んだ時間は10分ないくらいです。

ちなみに、以前10時半頃に行ったときは長蛇の列ができていたので諦めました。

展示室の混雑状況は、1つの作品に4.5人は集まっていると言えばわかりやすいでしょうか。

時間が経つにつれておそらくランチが終わった人たちが到着したのか?人が増えていきましたね。

11頃モーニング→岡本太郎展→早飲みなんてプランで動いていましたが、お酒を飲みながら作品について語り合う時間も至福です。

ゆったり見たい方は平日がおすすめです。

 

所要時間

12時に入館して15時まで見たため、かかった時間は3時間です。

じっくりと見て回る場合、3時間以上を見込んだ方がいいです。

後に予定がある方は気をつけましょう。

 

タローマングッズが可愛い

NHK製作の短編特撮テレビ番組『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』のガチャガチャやお土産グッズがありました。

2回目で欲しかった種類のタローマンが出てくれました。

NHK名古屋放送局では、岡本太郎の展覧会に合わせて「展覧会 タローマン in 名古屋」が開催されています。

 

まとめ

岡本太郎の展覧会は、彼の人生そのもの。

まるで岡本太郎と共に歴史を歩んでいるような気分になりました。

戦争や長安での捕虜生活など壮絶な経験を乗り越え、芸術活動に真摯に取り組んだ岡本太郎だからこそ、現代に生きる人々へも強いメッセージを残しているのではないでしょうか。

岡本太郎の魅力に引き込まれる展覧会でした。

 

『展覧会 岡本太郎』 2023.1.14(土)~3.14(火)
[開館時間] 10:00~18:00、金曜日は20:00まで
[開催場所] 愛知県美術館