『「魔法少女まどか☆マギカ 始まりの物語/永遠の物語」TV Edition』が10月12月より放送されます。2011年のアニメ放送で話題を呼び、劇場版なども公開してきた作品です。まどマギの作品の魅力はさまざまな要素が語り継がれていますが、ここでは、筆者の独断で一部を紹介していきます!

※ネタバレしてしまうので、ゆるっと見たい方向けの記事です。

 

想像を絶する過酷で緻密なストーリー

「魔法少女」といえば、明るく前向きな主人公が仲間を守るため、人助けのためなど、純粋な動機で魔法を使って戦うイメージがあるのではないでしょうか。少なくとも幼い子供が憧れる魔法は「キラキラした楽しいもの」という印象が強いはずです。そういった作品では、彼女たちの成長や平和な日常の尊さにも焦点があたり、挫折はあったとしても「絶望」「死」とは無縁で心穏やかに鑑賞できます。

一見「魔法少女」の要素を踏襲したビジュアルでありながら概念をくつがえしたのが、『魔法少女まどか☆マギカ』でした。「まどマギ」の世界における魔法少女の契約とは、願いを1つ叶える代わりに魂を「ソウルジェム」に変え、魔法少女へと変化させ魔女と戦うというもの。ソウルジェムは魔法少女たちの魂を贄にした宝石で魔力の根源となりますが、魔法の使用や少女たち自身の恨み・妬みといった負の感情、肉体維持によって「穢れ」が蓄積されていきます。その穢れが溜まりきると魔法少女は「魔女」と化し、魔法少女たちの排除の対象となってしまいます。穢れを浄化するためには魔女と戦い続けなければならず、契約を交わした以上「人間」に戻ることはできないのです。

魔法少女になったのは、交通事故に遭い絶体絶命の状況で選択を迫られた少女や、思いを寄せる幼馴染を救いたい少女、父親の名誉を取り戻したい少女など、「夢」ではなく現実的な「願い」のため、自らの魂を売ってしまいます。その願いを叶えても自身の心が報われる展開は待っておらず、悲劇的な結末を迎えてしまうことも。「正義VS悪」のステージで魔法少女が活躍するものではなく、孤独や絶望に抗う少女たちの物語といえるでしょう。

 

ひとことで説明できないキャラクターたち

まどマギに登場するキャラは、その背景や心情、行動目的などが複雑で、それらが絡み合って壮大なストーリーを生み出しているといえます。

なかでも魔法少女と契約を交わす、マスコット的存在の「キュゥべえ」は、見た目はかわいらしく、一見すると魔法少女系の作品でなじみのあるサポーターキャラと錯覚します。しかし、魔法少女の身に何かが起こっても平然としていたり、まどかを執念深く魔法少女に勧誘したりなど、物語が進むごとに不穏な空気をもたらしていきます。驚くべきは、魔法少女になる上での命に関わる重要事項やデメリットなどを必要になるまで説明せず、真実が発覚して魔法少女に咎められると「説明を省略しただけ」「聞かれなかったから答えなかった」と答えるのみ。キュゥべえには感情がないため、魔法少女たちが動揺している理由も理解できないのです。

多くの視聴者から批判をされるキャラですが、悪意というよりも「価値観の違い」をまざまざと突きつけられるため、不快感を覚える人も多いのだと考えられます。キュゥべえ自身も明確な行動目的のもと動いていますが、ただその餌食になってしまうのが少女たちというところが残酷です。少女たちをはじめ、キャラ一人ひとりが丁寧に描かれている点も、作品の魅力です。