ロロノア・ゾロは、海賊『麦わらの一味』の船員のひとりで、主人公モンキー・D・ルフィにとって初めての仲間。世界最強の剣豪を目指し、日々の鍛錬を惜しまないクールでストイックな剣士です。長い連載が続き数々の個性的なキャラクターが登場する中でもその存在感は色あせず、読者を魅了し続けています。

 

筋の通った漢気

ゾロは「世界一の剣豪」になる野望のもと、ストイックに鍛錬を積む姿が印象的。そして圧倒的な実力差を前にしても、自分の超えるべき相手であればひるまず立ち向かいます。ミホークと初めて対峙したときは、まさにゾロの信念を物語るエピソードといえるでしょう。のちにミホークに弟子入りしますが、ドレスローザ編で初めて「黒刀」を披露し敵を撃破したとき、修行中のミホークの言葉を回想して嬉しそうな表情をしていました。己の野望のため、自身の負けた経験を血肉にしていく姿には心つかまれる人も多いのではないでしょうか。

 

また、客観的には「人に従う様な男には見えない」と評価されながら、船長のルフィを誰より立て、そしてルフィからも絶大な信頼を得ています。自分がついていくと決めた者にはとことんついていき、ブレが生じないよう守り、軌道修正をしていくのです。スリラーバーグで人知れず命を張ってルフィや仲間たちを守り抜いた姿や、ウォーターセブンでウソップに“けじめ”を求める姿。仲間想いでありながら、ときに厳しい一面もみせるなど、一味が“なれ合い”ではなく“チーム”として機能するために欠かせない存在です。ゾロがいなければ、今の麦わらの一味は存在しないといっても過言ではないでしょう。

 

垣間見える優しさ

普段はクールで武骨なゾロですが、ルフィと出会ったときから意外な優しさを見せる男でした。海軍の基地にて、ある少女を救ったことがきっかけで海軍の反感を買い、磔にされた上程で登場しました。その少女が飲まず食わずのゾロのために作ったおにぎりは砂糖入りで、海軍大佐の息子が捨てるほど、おいしいとはいえないもの。しかし誰もいなくなったあと、捨てられたおにぎりを食べ、少女に感謝の気持ちを込めた伝言をルフィに伝え、ルフィに気に入られ仲間に誘われたのです。子供の純粋な優しさを受け入れる懐の広さは、ゾロの魅力をよく表しています。

 

アニメオリジナルではありますが、たとえ鍛錬中であっても、足がしびれて立てなくなったブルックを慌ててお姫様だっこして、トイレに連れていったり、ウォーターセブンでは、赤ん坊の世話をしていたり。日常のワンシーンでもゾロの優しさが見られ、人間的魅力に溢れているのがわかります。

 

なんともかわいいギャップ

ゾロのギャップといえば、なんといっても方向音痴で、すぐに迷子になってしまう困った一面。しかも本人はまったく自覚がなく、危うさを孕んでいます。わりと最近のエッグヘッド編では、ベガパンクを探しに行こうとするゾロに対し、「お前が人を探すだと?そのお前を誰が探すんだ!?」と引き止めるサンジと、それに引き続くチョッパーやロビンも。歴戦の実力を身につけても、方向音痴だけは、直せないようです。

 

そもそもゾロは、故郷の「シモツキ村」から旅立ち、帰れなくなった身。航海術がないので迷うのは仕方がないかもしれませんが、なんともゾロのアイデンティティが感じられる過去を持っています。方向音痴に関してはゾロにとって定番のコミカルな場面ですが、なにかしら物語の伏線ではないか?と考える人もいるようです。

 

ゾロの強い信念と客観的に捉えられる冷静さ、芯の優しさは、本作の物語をより魅力的にしています。社会の波に揉まれ、さまざまな情報や誘惑がある現代人の我々にとっても、取り入れたい要素がありますね。